子どもの試行錯誤を価値に変える 忙しい父親のための「プロセス承認」実践法
忙しい日々の中でも、子どもの「プロセス」に目を向ける重要性
仕事に追われる毎日で、子どもとの時間は限られているかもしれません。ついつい、テストの点数や運動会の順位など、目に見える「結果」に注目しがちではないでしょうか。もちろん結果も大切ですが、子どもの成長において、その結果に至るまでの「プロセス」、つまり努力や試行錯誤の過程に目を向け、それを承認することが、子どもの自己肯定感を育む上で非常に重要であるとされています。
なぜなら、プロセスを評価されることで、子どもは失敗を恐れずに挑戦する意欲を持ち、困難にぶつかっても粘り強く取り組む力が養われるからです。結果が出なかったとしても、「頑張った過程」や「工夫したこと」を認められる経験は、子どもの内発的な動機づけを高め、次の挑戦へのエネルギーとなります。
プロセス承認が子どもの自己肯定感を高める理由
心理学の研究では、結果のみを褒められるよりも、努力や過程を褒められた子どもは、より難しい課題に挑戦する傾向があり、失敗から立ち直る力(レジリエンス)も高いことが示されています。これは、自分の価値が「できた・できない」といった一時的な結果ではなく、「頑張ることそのもの」にあると内面化できるためです。
忙しい父親にとって、子どものすべてのプロセスを詳細に見守ることは難しいかもしれません。しかし、短時間でも意識して子どものプロセスに目を向け、適切な言葉で承認することで、子どもの自己肯定感を効果的に育むことが可能です。
忙しい父親のための「プロセス承認」実践法
短時間でも実践できる、プロセス承認の具体的な方法をいくつかご紹介します。
1. 短時間での「観察の質」を高める
物理的な時間は短くても、意識を集中させることが重要です。子どもが何かに取り組んでいる様子を見かけたら、数分でも良いので、その「過程」に注目してみてください。
- 結果だけでなく、そこに至るまでの「行動」を見る: 例えば、難しい問題に取り組んでいるなら、すぐに答えが出なくても、消しゴムで消したり、別の方法を試したりする様子を観察します。
- 「工夫」や「試行錯誤」のサインを見つける: 作文を書いているなら、書き直しをしているか、本で調べ物をしているか。積み木なら、どうやってバランスを取ろうとしているか。
- 感情の動きに寄り添う: 難しくて困っている顔、できた時の嬉しそうな顔など、プロセスの途中で見せる感情も重要な情報です。
2. 具体的に「プロセス」を言葉にして伝える
観察で見つけた子どもの努力や工夫を、具体的な言葉にして伝えます。抽象的な褒め方よりも効果的です。
- 例1:難しいブロック作品を作っている時
- 「わあ、すごく複雑な形を作っているね。前に作った時より、小さくて細いパーツもうまく組み合わせてるね。」(具体的な行動への言及)
- 「何度も積み直してたけど、諦めずに粘り強く取り組んだね。」(努力への言及)
- 例2:テストで目標点に届かなかった時
- 「今回は目標点に届かなかったけれど、苦手な□□の問題で、前より△△という解き方を試せたのは大きな進歩だね。努力した過程は素晴らしいと思うよ。」(結果とプロセスを分けて評価し、努力を承認)
- 例3:お手伝いを頼んだ時
- 「食器洗いを頼んだら、すぐに始めてくれたね。しかも、お皿を割らないように丁寧に扱っているのが分かったよ。」(指示への応答と丁寧さというプロセスへの言及)
「〜しているところを見たよ」「〜という工夫が素晴らしいね」「〜という努力を続けたから、きっと次に繋がるよ」といった具体的な声かけを心がけてください。
3. 結果とプロセスの評価のバランス
結果を全く評価しないわけではありません。結果も重要です。大切なのは、結果が良かった時は「結果が出たこと」と「そこに至るまでの努力や工夫」の両方を評価し、結果が振るわなかった時は「結果は残念だったが、プロセスは素晴らしかった」と、努力の過程を特に丁寧に承認することです。このバランス感覚が、子どもの健全な自己肯定感を育みます。
ITプロジェクトにおける「成功/失敗」に関わらず、開発プロセス自体を振り返り、学びを得る「レトロスペクティブ」のように、子どもと一緒に「どういう風に取り組んだら、こうなったかな?」「次に同じようなことに挑戦する時に活かせそうな工夫はあった?」などと短時間で振り返る習慣を持つことも有効です。
プロセス承認がもたらす長期的な効果
日々の小さなプロセス承認の積み重ねは、子どもの自己肯定感を育むだけでなく、以下のような長期的な効果も期待できます。
- 主体性の向上: 自分で考え、工夫することに価値を見出すようになる。
- 問題解決能力の向上: 困難にぶつかっても、試行錯誤することで解決策を見つけようとする力がつく。
- レジリエンス(精神的回復力)の強化: 失敗や挫折から学び、立ち直る力がつく。
- 学習意欲の向上: 結果だけでなく、学ぶ過程そのものに面白さを見出すようになる。
忙しい中でも、子どもの成長を支えるために
たとえ一緒に過ごす時間が短くても、子どもの「プロセス」に意識的に目を向け、それを具体的な言葉で承認することは可能です。通勤中や昼休み、寝る前など、隙間時間を活用して、その日の子どもの様子を思い返したり、子どもとの短い会話の中で「今日、何か頑張ったことある?」と問いかけたりするだけでも良いでしょう。
忙しい父親の皆さまが、子どもの日々の努力や試行錯誤といった見えにくい「プロセス」に価値を見出し、それを承認していくことが、子どもの自己肯定感を高め、未来への力強い一歩を支えることに繋がります。
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